就労について

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医療機関でのリハビリテーションは、回復期リハビリテーション病棟の増加とともに整備されてきましたが、退院後のリハビリテーションはまだまだニーズを満たしているとは思えないのが現状です。その後の就労や社会参加を支援するサービス等の認知度も低いことも問題です。

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懸命なリハビリテーションに取り組み、何とか自宅生活ができるようになっても、後遺症の程度によっては職場復帰や再就職によって社会との縁を再構築することは容易ではありません。就労意欲もあり、社会参加意欲もあるのに自宅に閉じこもりがちになっているということが少なくありません。

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このようにリハビリ職種が働く臨床現場でも、身体・精神・発達・老年期と退院に向けて就労意欲はあるけれども実際にどのような支援機関と調整してよいのかわからないといった経験はないでしょうか。今回は障がいを負ったために一般就労が困難となった場合の支援機関や就労までの流れをご紹介したいと思います。

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働くことってなんだろう?

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人間はその生涯において、生活の大部分を働くことに費やし、仕事を通して人格を形成し、成長していくと言われています。さらには他者とのつながりを築き、社会システムのなかで、より人間らしい協調的な生き方を実現していきます。また、対価を得ることで文化的な嗜好を楽しむこともできます。働くことは、その人らしく生きていくために必要不可欠なものといえます。

特に労働の意義として重要になるのが、「生計の維持」「社会的役割の実現」「個性の発揮」と言われています。

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ここでベストセラーになった「日本で一番大切にしたい会社」に書いてある、チョーク日本シェア約30%で社員の70%が知的障害者という日本理化学工業株式会社を紹介したいと思います。

「人間の幸せは、
人に愛されること
人にほめられること
人の役に立つこと
人から必要とされること」  これに尽きる。
そして、愛されること以外の3つは、「働くこと」を通じて手に入れることができる。

 

これは日本理化学子工業株式会社の社長の言葉です。この言葉は仕事に限らず生きていくうえで重要なことを教えてくれているようです。

この言葉からもわかるように人間には金銭による対価「生計の維持」だけでなく、自分自身の能力が社会や他者に承認されること「個性の発揮」「社会的役割の実現」が重要であるといえます。

 

 世界的にはどのように考えられているのでしょうか!?

 

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障害者の職業リハビリテーションに関する勧告

国際労働機関(ILO)による(1995年)。障害者のリハビリテーションについて「継続的かつ総合的リハビリテーション過程のうち、障害者が適当な職業の場を得、かつそれを継続することができるようにするための職業的サービス、例えば職業指導、職業訓練及び選択的職業紹介を提供する部分をいう」とした。職業リハビリテーションに関する初の国際的指針である。

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世界人権宣言

「世界人権宣言」(1948年)では、働くことについて「すべての人は、勤労し、職業を自由に選択し、公正かつ有利な勤労条件を確保し、及び失業に対する保護を受ける権利を有する」とその権利性を明示しています。

働くことの権利性の主張は、近年、さまざまな就労の場において、障害者、生活困窮者、母子世帯の母親、若年者、老年者からニート、フリーターまで、多くの就労支援を必要とする人々に対する人権擁護、労働福祉施策として拡大、強化の傾向にあります。

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社会的責任(CSR)

社会は完全なものではなく、多くの未解決問題を抱えています。障害者雇用もその一つです。行政も前向きに取り組んでいますが、それだけでは困難な状態です。しかし、民間企業には、応用力があり俊敏性に優れ、個人の持つ技術や能力を形にできる力があります。また、少子高齢化による労働力の不足、ノーマライゼーションの推進の広がり、法定雇用率達成の義務などが挙げられます。社会を構成する一員として、企業は障害者雇用をする責任を担っており、こうした責任を果たしている企業は次世代を生き抜く力を蓄えられるのです。つまり、それだけの余力のある会社として評価され、社会に受け入れられる企業へと成長していきます。

 

ダイバーシティ

障害者と健常者の境目は、はっきりとしたものではありません。誰もがある部分では障害を持っています。また、環境が整えば(肢体障害者のためのエレベーターや視覚障がい者のための音声放送など)、障害による不便さはありません。ひとりひとりが、身体的条件、人種、性別、年齢、宗教、信仰などの属性にこだわることなく多様性を受け入れ、能力を活かしていく、この考え方を「ダイバーシティ」といいます。

 

臨床現場でこのような経験はありませんか?!・・・

 

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一般企業に勤めていた40歳代のAさん、脳血管障害にて左片麻痺と高次脳機能障害が残り、回復期の病院にてリハビリを継続し、順調に回復するも、リハビリ職種の評価としては現在の状態では就労内容によっては復職も可能であるかもしれない。しかし入院前の企業の情報はご本人様からの情報しか得ることができない。こういった事例は多くのセラピストが経験することかと思います。その際に活用できる支援機関の提案等をご本人様に行うことができれば、復職に向けての支援の引継ぎができます。もし復職が難しくとも、ご本人様の就労意欲に応えることのできる社会的な資源の活用などにもつなげることができるかもしれません。もちろん、これらは精神障害領域、発達障害領域などの三障害にも当てはまります。

 

 

もとの職場に復職する場合         → 職場定着支援

違う職場に就職する場合           → 求職活動支援+職場定着支援

まだまだ就職に向けて準備が必要        → 就職に向けた準備支援+求職活動支援+職場定着支援

あ労働意欲はあるがこれから先も一般就労は困難  →就労継続支援事業所や授産施設等の社会的支援の活用。

職場定着支援及び求職活動支援就労1

就職に向けた準備支援

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労働意欲はあるが一般就労は困難
就労3

※今回は簡単な図としてまとめさせていただきました。もちろんこれらは明確にわけられるものではありませんが参考にしていただけると思います。


続いてはあまりセラピストが考える機会の少ない企業の立場から考えてみましょう・・・

法定雇用率制度をご存知ですか!?

 

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すべての事業主は法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります(障害者雇用率制度)。社会情勢に合わせて、障害者雇用に関わる法律は5年に一度見直されることがルールとなっています。1967年法定雇用義務ができたときに民間企業に対して求められた雇用率は1,5%でした。1987年に、知的障害者の雇用が雇用率に反映されるようになり1997年に義務化されたとき、1,8%になりました。2006年には、精神障害者の雇用が雇用率に反映されるようになり、2013年4月から、2,0%(民間企業の場合)に変更となったのです。2018年には知的障害者同様、精神障害者の雇用も義務化され、さらに高い雇用率が掲げられることが予測されます。

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障害者雇用率にまつわるお金の話

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障害者雇用納付金制度

法定雇用障害者数に足らない障害者の数に応じて、納付金を徴収する制度。常用雇用労働者が100人を超える事業所に義務付けられています。

 

企業にはお金を支払うばかりではなく、いろいろなメリットのある制度もあります

 

障害者雇用調整金

法定雇用率を超えて障害者を雇用している事業所に対して支給されます。常用雇用労働者が201人以上の事業所において、超過して雇用している障害者の人数に応じて支給されます。また、常用雇用労働者が200人以下の場合は報奨金として支払われます。

 

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、就職が特に困難と思われる障害者や高齢者などを雇用した事業主を対象として、その賃金の一部を一定の期間助成金として支給するもので、ハローワークなどの紹介による、雇用保険の適用事業所が対象となります。また、重度の障害者に対しては、重度以外の障害者よりも支給期間が長く、助成額も高く設定しています。

 

特例子会社

障害者の雇用の促進等に関する法律(44条)に規定される。障害者雇用を目的として設立された子会社。障害者の労働能力や就業条件に配慮し、職域拡大を図る効果がある。公共職業安定所の認定を必要とし、子会社は障害者雇用率制度および障害者納付金制度の適用上、親会社の事業所とみなされる。特に、大企業における障害者の雇用促進策として活用されています。

 

 

障害者雇用を成功させている企業の共通点とは

 

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 一番重要なことは関連機関との連携です。ハローワークや就労移行支援事業所などの支援機関はもちろん、障害者の家族、主治医との密なネットワークも不可欠です。地域の作業所、異業種他者の特例子会社など、いろいろなネットワークを形成し情報交換することも強い味方になります。

企業が障害者を雇用するうえでの3つの工夫

①業務を細かく分けてみる

1つの業務には、いろいろな作業が含まれています。それを細分化し、障がいが支障とならない業務を作り出していきます。

②業務内容を創出する。

一般に日本企業の業務はハイスペック化しています。それをこなせる人材を採るのは、障害の有無にかかわらず難しくなっています。そこで、その業務をこなせる新しい人材を探すのではなく、すでにこなしている社員に、もっとその業務に専念できるようにするため、その社員が手放せる業務がないかどうかを考え、そこに障害のある社員を充てるという創出方法があります。

③新しい業務を作り出す

その社員にできることは何かを考え、これまでの業務にこだわらず、新しく創り出していく。

※業務を細かく分けてみる、業務内容を創出する、新しい業務を作り出す。これらは、臨床現場で患者様がご自宅に退院される際のご自宅での役割活動を見出す際にも参考になるのではないかと思います。

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最後はOT業界でも有名な山本五十六の言葉で締めくくりたいと思います。

 

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

 

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。

 

やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

 

患者様が実際に就業に就いて、営みが行われている姿を想像してみましょう。セラピストの提供している治療の目的が明確に見えてくるのではないでしょうか。


今回は様々な分野で活躍されている作業療法士の竹内 祥悟さんに書いていただきました。

 

 

 




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投稿日:2015-04-22 | Posted in OT通信No Comments » 

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