作業療法士が行う注意障害の評価やリハビリテーションについて



高次脳機能障害の中でも特に多くみられる症状に注意障害があります。注意障害はADL動作にも大きな影響を与えますし、療法士が訓練をすすめていく上での大きな阻害因子となることも多いかと思います。 作業療法士は注意障害をどのように評価しアプローチすれば良いのでしょうか?



注意障害の評価方法

注意障害の評価には従来から多くの机上検査が行われてきています。 また、注意が働くためには覚醒発動性といった機能が必要になりますので、注意障害の評価をする前には覚醒発動性の評価もする必要があります。そのために認知症の検査や鬱病などメンタル面の評価も注意障害を評価していくためには必要になってきます。



注意障害机上評価

視覚性検査

●TMT

正式名称は「Trail Making Test(トレイルメイキングテスト)」といい、TMT-A検査とTMT-B検査の2つで1セットの検査である。 TMT-A  A4用紙に1~25までの数字がランダムに配置されており、被験者に1から順番に1→2→3と鉛筆で線を結んでもらい、最後の数字である25に到達するまでの所要時間を計測する。 TMT-B A4用紙に1~13までの数字と「あ」から「し」までの仮名がランダムに配置されており、被験者に1→あ→2→い→3…といったように数字と仮名を交互に鉛筆で線を結んでもらい、完了するまでの所要時間を計測する。 TNT-AとTMT-Bどちらの検査にも共通するのは「視覚性の探索能力」や「注意機能の選択性注意」が関係するという点である。さらに、TMT-B検査では数字と文字を交互に線で結ばなければならないため、「ワーキングメモリ」や「注意機能の分配性注意」が関係する。 そのため、単純な作業速度の低下や視覚性の探索障害であれば、TMT-A検査とTMT-B検査の両方に低下がみられるが、もしもTMT-B検査のみに著名な低下がみられた場合には、ワーキングメモリなどの障害が疑われ、前頭葉の機能低下が推測されます。



●D-CAT

注意機能スクリーニング検査 ランダムに並んだ数字の中から特定の数字を抹消します。1文字、2文字、3文字の抹消を3回施行し、各回の作業量、見落とし率、各回での作業の変化率、間違いの数につき検討します。5分くらいで施行可能です。



●かなひろい検査

文章の中から決まった文字に印を入れていく課題。所要時間は2分間で転換性注意障害の評価に使用されます。



●Stroop Test

前頭葉機能検査としてよく用いられます。PartⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳがあり、色に集中して、漢字名という別の意味を抑制する必要があり、選択制注意の評価として用いられることもあります。



●Symbol Digit Modalities Test(SDMT)

1つの記号に対応する数字を制限時間内にできるだけ多く記入するテストです。ストップウォッチ必須。採点には評価用透明シートを使います。 聴覚性検査



●CAT(標準注意検査法)

色々な要素を含んだ総合的な検査です。7つの下位検査より構成されます。すべての検査を実施するのに時間を要します。



●等速打叩検査

鉛筆で1秒に1回の速さで10秒間叩かせ、30回行います。平均打数と反応野動揺性で評価します。持続性注意障害の評価に用いられます。



●Audio-monitor method

「ト、ド、ポ、コ、ゴ」の音をランダムに発生させ「ト」のときに反応させます。



注意障害行動評価

Behavioral Assessment of Attentional Disturbance(BAAD)

BAAD では各項目の行動が出現した頻度で0 ~ 3 の評価点を付与し、合計点を求める行動評価です。





注意障害のリハビリテーションと介入のヒント

注意障害を持った方に対するアプローチには様々な方法があります。しかし闇雲に注意力を使う課題をしてもなかなか良くならないことで悩まれている方も多いかと思います。そういった場合は少し考え方を変える必要があります。 では注意障害のリハビリテーションの介入はどのようにしていけば良いのでしょうか?



注意障害のリハビリテーションのヒント

○まずは覚醒をあげる

高次神経ピラミッドでも説明したように注意が働くためには、覚醒していなければいけません。何かに注意を向けるためにも傾眠傾向である場合やぼーっとしていては注意を向けることはできません。そのような状態でいくら訓練をしても効果はあがってこないです。 注意障害になることが多い脳卒中や頭部外傷の患者は、脳へのダメージにより、ボーっしていたり、脳が疲労しやすいです。そのため難しい課題を連続ですることも最初は避けた方が良いかもしれません。



○覚醒はどうして下がるの?

覚醒が低下する原因は様々です。脳卒中や頭部外傷だと脳損傷のダメージが影響していることが原因ですが、それ以外にも寝不足やうつ症状、睡眠薬の影響なども考えられます。そのため注意障害の方に対してリハビリテーションを展開する前にうつなどの精神状態や服薬状況を確認することも重要です。



○覚醒をあげる方法は?

覚醒を上げる方法には日光を浴びる、座位や立位をとる、音楽をかけるなどがあります。 日光をあびると睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が少なくなります。また脳の覚醒を促すセロトニンホルモンが分泌されるので覚醒が高まります。このセロトニンの分泌量の低下はうつの原因の1つともされているので精神的に落ち込んでいる人には日光を浴びることから始めるのも良いです。 また座位や立位をとることも覚醒を高める方法です。意識を覚醒状態に保つ中枢は脳幹網様体と呼ばれているところになります。この脳幹網様体が 足底の踵や母趾にはメカノレセプターと呼ばれる感覚受容器が豊富に存在します。このメカノレセプターは立位時などに体重がどのようにかかっているかを感知するセンサー機能があります。足底のメカノレセプターの情報は脳幹に伝えられ、そこから視床、大脳皮質へと伝わります。つまり立位や座位で体重を感じることでメカノレセプターが刺激されることで網様体が賦活し覚醒があがります。 また音楽やテレビなどの外部刺激によっても覚醒は高まります。その時には本人が興味のある歌やテレビが良いかと思います。なじみの曲や歌の方が覚醒も高まりやすいです。 様々な注意障害のアプローチをする前に準備として覚醒の評価やアプローチをしてみると良いです。



注意障害へのアプローチ方法



注意障害のアプローチ方法は大きく分けて5つあると言われています。 ① 直接的介入、②代償的介入、③能力補填的介入、④行動的介入、⑤環境的介入の5つ です。 直接的介入 直接的介入は一般的なリハビリの訓練になります。 直接的介入はさらに4種類に分類でき、非特異的介入、特異的介入、段階的介入、制御負荷的介入があります。



◯非特異的介入

注意障害を分類別にアプローチするのではなく、注意を全般的にアプローチする方法です。 単純反応課題や複雑反応時間課題などがあり、とにかく注意を使用することが大切になります。



◯特異的介入

注意障害を分類別にアプローチする方法です。 選択性注意、持続性注意、転導性注意、分配性注意それぞれの機能にアプローチします。



◯段階的介入

少しづつ難易度をあげていくアプローチ方法です。ボトムアップ的に介入していきます。 ①外部刺激への適切な注意 ②外部刺激への注意の持続的な集中 ③外部刺激への探査と選択 ④内部刺激への注意 ⑤反応と行動の調節 など段階づけしながら介入していきます。



◯制御負荷的介入

「注意機能は、他の諸機能への制御にある」との考えの下、課題の内容ではなく、課題の遂行形式を意図的に変化させます。 つまり、速度・持続度・正確度を操作し、制御機能に負荷をかける方法です。 例えば、課題をできるだけ速く遂行したり(最大速度)、やりやすい速度で遂行したり(自然速度)、できるだけゆっくり遂行したり(最小速度)します。 ②代償的介入 注意機能以外の機能を利用して、注意障害を補う方法です。 例えば、記憶は比較的保たれている場合、注意しないといけない内容を課題遂行前に意識的に口に出してみます(自己教授法)。 また、注意の持続が難しい場合は、自分のペースを保つことをルールとして、疲れたら休憩することを教えます。 転動性の注意障害の場合には、事前にいくつかの課題内容を書き留め、一つの課題に執着しないようにします。 ③能力補填的介入 何らかの外的手がかりを利用し、注意障害の影響を補う方法です。 例えば、スマホなどでアラームを設定しておいて、アラームで行動への注意を喚起したりします。 カレンダーに印をつけておくもの良いです。 ④行動的介入 日常生活活動中に観察される様々な注意行動に対して、細かく指示をしていきます。 車いすからベッドに移乗することを例にすると、 「車いすはこの位置に設置して、その次にブレーキをかけます。フットレストから足を下して、両手でベッド柵を掴んでから立ち上がりましょう」と指示を与えます。 なぜそれをしないといけないのかの動機づけも大切です。そのためには、目的をもった説明をしなければいけません。 また、失敗したり困惑してしまったときの励ましや鎮静的指示も欠かせません。 日常生活にそれが反映されたときは、注意行動への積極的な認めによる報酬的指示も大切です。


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投稿日:2018-10-02 | Posted in OT通信No Comments » 

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