半側空間無視について
半側空間無視とは?
半側空間無視とは損傷大脳半球と反対側の刺激に気がついたり、反応したり、その方向に向いたりすることが障害される病態です。
右半球の損傷で左半側空間無視が高頻度にみられ、重症度も大きいと言われています。
方向性注意機能には半球差があり、右半球は左右の空間性注意を司っているため、右半球の損傷で、左半側空間無視が強くみられるようになるという仮説があります。
責任病巣は頭頂葉といわれています。また、近年は頭頂連合野と前頭連合野とを繋ぐ神経線維である上縦束(SLF)も半側空間無視と強い関わりがあるとも言われています。
半側空間無視の評価
☆BIT
BITはイギリスのWilsonらによって開発され、1987年に出版された半側空間無視検査であり、欧米で広く用いられています。
BIT日本版を用いることによって、国内外を問わず施設間、研究者間での半側空間無視症状の比較や情報交換が可能となります。さらにBITは、従来の検査方の集大成である「通常検査」と日常生活場面を模した「行動検査」の2つのパートからなる点が特徴です。これによって、日常生活や訓練場面における半側空間無視発現の予測や訓練課題の選択への方針が得られます。
【通常検査】 | 【行動検査】 |
1.線分抹消試験 | 1.写真課題 |
2.文字抹消試験 | 2.電話課題 |
3.星印抹消試験 | 3.メニュー課題 |
4.模写試験 | 4.音読課題 |
5.線分二等分試験 | 5.時計課題 |
6.描画試験 | 6.硬貨課題 |
7.書写課題 | |
8.地図課題 | |
9.トランプ課題 |
(カットオフ通常検査131/146点 行動68/81点)
☆TMT
TMT(Trail maiking test)とは数字を1から25まで順に結ぶ(Part A)、数字とひらがなを「1→あ→2→い・・・」のように交互に結ぶ(Part B)という二つの課題からなります。
Part A
『注意の持続・選択』 『視覚探索・視覚運動協調性』などを調べる検査で、前頭葉損傷患者に鋭敏な検査です。
Part B
注意や概念の変換能力が必要とされる為、遂行機能検査としてよく利用されます。
☆CBS
生活場面の10個の状況で直接半側空間無視の影響を観察し、評価する。
●10項目を4段階で評価する
●観察で客観評価、質問で病識の評価を行う。
0. | 偏移なし |
1. | 軽度 常に右から気づき、左へ注意を向ける。 |
2. | 中等度 明らかな左への注意欠陥や衝突がある。 |
3. | 重度 左半分への注意がない。 |
半側空間無視と同名半盲の区別
半側空間無視と同名半盲の違いについて
まず病変部位・病巣ですが、半側空間無視は中大脳動脈領域(主に頭頂葉)に対し同名半盲は後大脳動脈領域(主に後頭葉など視覚路)です。
簡単に二つの違いを判断するために、線分二等分試験を用います
線分二等分テストで空間無視患者では片側への偏りが見られるのに対し、同名半盲患者は正常に行うことができます。
それは、頚部の回旋等での見えない部分を代償することができるからです。テスト中の頚部の動きなど代償動作をよく観察をしてみて下さい。
半側空間無視と車の運転
臨床場面でよくある問題で空間無視の症状がある方が車の運転がしたいと言われることがあります。
特に症状が軽度の方の場合どうすれば良いか迷うこともあるかと思います。NPO法人日本身障運転者支援機構のホームページに「自動車運転シミュレーターレンタル」や「ドライビングセラピスト地域連携センター」というものがあります。参考になればと思い紹介させていただきました。